Topics|トピックス

2022.01.31

「特定技能」と「技能実習」の比較と2つの制度の関係性 修正

外国人を雇用する制度として有名な技能実習制度は、主に人手不足の現場 で、外国人を雇用できる制度として重宝されてきました。

 

しかし、あくまでも「技能習得のための実習を行う制度」であり、外国人を単純労働に対する労働力のみ として扱うことは許されていません。

 

今回は外国人雇用にかかわる、在留資格「特定技能」と「技能実習」の2つの制度について紹介をします。

 

2つの制度を比較検討する際に、お役に立てる内容となります。

 

「特定技能」と「技能実習」の比較と2つの制度の関係性

 

「目次」

1.制度目的の比較

2.監督機関の比較

3.従事可能な職種の比較

4.在留可能な期間の比較

5.外国人に求められる技能水準の比較

6.外国人の給与水準の比較

7.受入れにかかる費用の比較

8.転職の可否

9.「特定技能」と「技能実習」の関係性

10.まとめ

 

 

1.制度目的の比較

 

まずは特定技能と技能実習の目的の違いを紹介します。

次の表のとおり、2つの制度の目的には明確な違いがあります。

 

特定技能技能実習
深刻な人手不足に陥っていると認定された14の業種にて、一定のスキルをもつ外国人労働力を使って人手不足を解消する。国際貢献の一環として、外国人を技能実習生として受入れ技術を習得させ、発展途上国への技術移転を目指す。

 

2019年より開始された特定技能では、外国人労働者の雇用が認められていなかった単純労働の現場でも、外国人を労働者として受入れすることが可能となりました。

 

技能実習でも、実質的にほぼ労働者として外国人が雇用されてきましたが、あくまでも「技能実習生」であるため、厳格に決められた職種・作業の範囲内での業務に限り、技能を習得することだけを目的として就労が認められています。

 

そのため、技能実習では制度の趣旨に違反して、摘発される企業も多いのが実情です。

 

 

2.監督機関の比較

 

特定技能と技能実習では、制度の運用を直接に監督する機関が異なります。

特定技能を監督する機関は、出入国在留管理庁であるのに対して、技能実習は外国人技能実習機構が制度の監督を行います。

 

それぞれの機関が担う役割については、次の通りです。

 

〇出入国在留管理庁

 

日本に在留する全ての外国人を監督する機関でもあり、特定技能に関しては、全ての手続きを出入国在留管理庁が審査・監督します。

 

特定技能の外国人を雇用する際には、特定技能ビザ の取得(=在留資格の認定)が必要です。ビザ申請に必要な書類を作成した後に、出入国在留管理庁へ提出をして審査を通過すると、特定技能ビザを取得することができます。

 

また、企業が特定技能の外国人の雇用を開始した後には、3ヶ月に1度の頻度で、特定技能制度の運用状況に関する書類を提出する必要もあります。

 

参照 : 出入国在留管理庁(特定技能所属機関による届出)

 

加えて、出入国在留管理庁は、企業へ訪問監査を実施して、特定技能の外国人が不当な扱いを受けていないかなどを確認することもあります。

 

 

〇外国人技能実習機構

 

外国人技能実習機構は、名前の通り、外国人技能実習制度の運用を審査・監督するための機関です。

技能実習生の受入れを希望する企業は、申請書類を外国人技能実習機構へ提出して、審査に合格することで技能実習計画認定通知書 が発行され、技能実習ビザを取得するための要件を満たします。

ビザ発行の権限は、出入国在留管理庁がもつため、外国人技能実習機構より取得した技能実習計画認定通知書 を出入国在留管理庁に提出することで、初めて技能実習ビザの取得ができます。

 

外国人技能実習機構は、申請書類の審査だけでなく、技能実習生を受入れしている企業や、監理団体への監査も行います。

 

※監理団体は、国から許可を得て技能実習生の受入れや企業のサポートをする機関です。

監査の際などに、技能実習を適正に実施していないことが判明すると、技能実習生の受入れ停止などの措置をする権限もあります。

 

 

3.従事可能な職種の比較

 

特定技能と技能実習で従事可能な職種はそれぞれ、次の通りです。

 

〇特定技能

特定技能では、人手不足が深刻と認められた14の業種にて外国人を雇用することが認められています。

 

特定技能 (14業種)
介護

ビルクリーニング素形材産業

産業機械製造業

電気・電子機器製造業

建設

造船・舶用工業

自動車整備

航空

宿泊

農業

漁業

飲食料品製造業

外食業

 

次の表では、農業を例として、「業種と業務区分」の関係を表にしました。

業種によっては、業務区分が設定されている場合もあり、その場合は別の業務区分の職種に従事することはできない点に注意して下さい。

 

 

業種

業務区分
農業耕種農業全般 : 栽培管理,農産物の集出荷・選別等
畜産農業全般 : 飼養管理,畜産物の集出荷・選別等

 

なお、特定技能では、農業と漁業に限り派遣形態での雇用も認められています。

 

〇技能実習

技能実習では85職種・156作業(令和3年3月16日時点)にて技能実習2号の受入れが認められています。

 

特定技能よりも、従事可能な業務が細かく細分化されており、基本的に156ある作業の中で1つの作業への従事のみが認められています。特定技能と比べてそれぞれの外国人が従事可能な業務範囲が狭いのも特徴です。

 

 

4.在留可能な期間の比較

 

それぞれの在留可能な期間は、次の表のとおりです。

 

特定技能技能実習

特定技能1号 (5年)

特定技能2号 (無期限)

技能実習1号 (1年)

技能実習2号 (2年)

技能実習3号 (2年)

 

特定技能には1号と2号があり、2号では無期限の在留期間が認められる予定です。

 

現在のところ、特定技能2号ビザを取得した外国人はおらず、将来的に「建設」と「造船・舶用工業」の2業種で特定技能2号が開始されることが決定しています。

 

この点については、全業種が対象とされる可能性もあるため、特定技能制度の動向については、最新の情報を追っていく必要があります。

 

 

5.外国人に求められる技能水準の比較

 

特定技能では「一定の専門性や経験などが必要」と規定されているのに対して、技能実習では介護職種を除いて、技能水準は求められていません。

 

技能実習「介護職種」では、入国前の日本語能力試験N4以上の合格が必要です。

特定技能の技能水準を満たす要件としては、次の2つがあります。

 

➀対応する職種での技能実習2号を修了
②特定技能の技能試験と日本語能力試験N4またはJFT-BasicA2レベルの評価

 

「技能実習2号の修了者」は、➀の要件を満たすため、対応する業務区分の特定技能ビザを簡単に取得することが可能です。

 

次の表は特定技能「漁業」と技能実習「漁業」の職種について、それぞれの関係を説明しています。

例えば、「かつお一本釣り漁業」の技能実習2号を修了した外国人は、漁業の特定技能ビザを取得することが可能です。

 

漁業の特定技能ビザを取得することで、技能実習生の時には従事が認められなかった「延縄漁業」や「いか釣り漁業」での就労も可能となります。

 

 

特定技能 (業種)

 

技能実習 (職種)技能実習 (作業)
漁業漁船漁業かつお一本釣り漁業
延縄漁業
いか釣り漁業
まき網漁業
ひき網漁業
刺し網漁業
定置網漁業
かに・えびかご漁業
養殖業養殖業ほたてがい・まがき養殖

 

 

6.外国人の給与水準の比較

 

特定技能と技能実習では、給与水準が異なります。

 

明確な金額額までの規定はありませんが、特定技能の場合「同じ職場で就労する、同じ経験・能力の日本人と同等以上の給与」とされています。

一方で、技能実習生の場合は各都道府県 の最低賃金の給与が支払われる場合が多いようです。

 

特定技能の外国人は、技能実習生よりも高い専門性や経験が求められるため、技能実習生と比べて、給与設定が高いのが一般的です。

 

 

 

7.受入れにかかる費用の比較

 

それぞれの制度で現地にいる外国人の呼び寄せにかかる、主な費用項目は次の表の通りです。

 

 

特定技能

 

技能実習
〇人材紹介費用
〇渡航費用 (往復)
〇オリエンテーション実施費用
〇入国前健康診断費用
〇ビザ申請費用
〇登録支援機関委託費用
〇その他費用
〇送出し費用
〇渡航費用 (往復)
〇日本語講習費用・入国後講習手当
〇入国前健康診断費用
〇ビザ申請費用
〇月次管理費用
〇その他費用

 

※上記費用項目は、外国人労働者の出身国の規定・人材紹介を依頼する機関や労働者本人に提示した雇用条件によっても変わる点はご了承下さい。

 

外国人労働者本人へ支払う給与を除くと、特定技能の方が発生する費用は少ないと言えます。
それぞれの費用項目の内容については、次の通りです。

 

【特定技能】

 

 

〇人材紹介費用

 

転職が認められている特定技能では、国内外の人材紹介会社を 介して特定技能ビザの外国人を採用する場合、紹介費用が発生します。

人材紹介は、有料職業紹介の許可を得ている、現地の送出機関や日本の登録支援機関が行う場合も多いようです。
なお、登録支援機関とは、企業に代わり特定技能ビザの外国人に対して実施する支援業務を代行できる機関です。

 

〇渡航費用
特定技能の場合、渡航費の本人負担が原則ですが、良い人材を採用したい場合は入国時の渡航費用を企業負担する場合も多いです(フィリピンの場合は、フィリピンのPOEAル-ルにより、渡航費用は企業が負担なっております)。

 

〇入国前健康診断費用
ビザ申請前に外国人が現地で健康診断を受ける必要があります。

 

〇オリエンテーション実施費用
特定技能ビザの外国人を雇用するためには、企業が日本での生活に関するオリエンテーションを実施する必要があります。オリエンテーションの実施には通訳者の同席も必要なため、自社でオリエンテーションを実施する場合でも通訳者を外部委託する場合は、別途費用がかかると見込まれます。

 

また、外国人労働者の送迎や各種行政手続きなどのため、社員の方が最低でも2日間程度は、雇用する外国人労働者に同行する必要があります。

自社でオリエンテーションの実施ができない場合は、登録支援機関へ実施を委託します。
入社前後に計2回実施するオリエンテーションがあるため、委託をした場合は、登録支援機関委託費用が発生します。

 

〇ビザ(在留資格認定) 申請費用
特定技能ビザの申請については、行政書士へ委託することもできます。
その場合は、委託費用が発生します。

 

〇登録支援機関委託費用
特定技能ビザの外国人を雇用するにあたり、生活相談体制や役所手続きの補助など、日本の生活に困らないための支援を実施することが求められます。

自社にて支援体制を整えられない場合は「登録支援機関」の許可をもつ機関へ、支援業務の委託をすることもできます。

登録支援機関に支援業務を委託する場合は、毎月1人2万円以上の登録支援費用がかかることが一般的です。

なお,フィリピン国籍の特定技能労働者の場合は、フィリピンの法律で、現地送出機関を仲介させることが義務付けられています。

そのため、現地のフィリピン送出機関への費用が発生します。金額については人材紹介料に含めて一括で給料数ヶ月分とする場合や、毎月5,000円の費用請求をするような場合があるため、提携する送出機関へ確認が必要です。

 

〇その他費用
特定技能ビザの外国人を雇用する場合は、現状、ほとんどの企業が登録支援機関に支援業務を委託しています。

紹介した「登録支援費」以外にも、空港への送迎や通訳人の手配など、支援業務の内容によって、特別にかかる費用について、実費を企業が負担する場合もある点に注意が必要です。

 

技能実習

 

〇送出し費用

技能実習生送出し国の送出機関にかかる費用です。送出し国によって費用は大きく異なります。

〇日本語講習費用・入国後講習手当

技能実習生は、日本への入国前後に日本語講習を受講します。
入国前、入国後の日本語講習費用と、入国後講習期間中の講習手当がかかります。

〇渡航費用 (往復)

技能実習生の国籍によっても費用が大きく異なりますが、技能実習生の往復の渡航費用は、企業が負担する必要があります。

〇入国前健康診断費用

特定技能と同様に、ビザ申請前に健康診断を受ける必要があります。

〇ビザ(在留資格認定)申請費用

特定技能と同様で、技能実習ビザの申請費用がかかります。

〇月次管理費用

技能実習生を受入れする際には「監理団体」と呼ばれる機関を通して、受入れをすることが一般的です。
監理団体へは監理費の名目で、毎月1人3万円以上の監理費用がかかることが一般的です。

〇その他費用

技能実習生を受入れする際には、その他にも「技能実習保険への加入」や「最低2回は受験が必須の技能検定試験料」などの費用が発生します。
また、フィリピン国籍の場合は、現地の強制保険へ加入する必要があるなど、国籍によって追加でかかる費用があります。

 

 

8.転職の可否

 

特定技能では、同じ業務区分の中での転職が認められています。
一方で、技能実習の転職はできません。例外として、技能実習2号から3号へ昇格するタイミングでの転籍は認められています 。

 

参照 : 出入国在留管理庁(在留資格「特定技能」について)

 

 

9.「特定技能」と「技能実習」の関係性

 

共通項の多い「特定技能」と「技能実習」では、次のような関係性もあります。

 

【技能実習から特定技能への移行方法】

 

既に紹介した通り、特定技能の業務区分と対応した職種で技能実習2号を修了すると、特定技能ビザの取得要件を満たすことができます。

 

また、違う業務区分への転職方法として、転職を希望する業務区分の「特定技能の技能試験に合格」する方法があります。

 

その際に、技能実習2号を修了している外国人実習生については、日本語試験を新たに受験し直す必要はありませんので、同業種であれば技能実習から特定技能への移行は難しくないと言えるでしょう。

技能実習から特定技能へ移行すると、技能実習1号から3号までの5年間と、特定技能の在留期間を併せ、10年の継続した在留歴を満たすことになります。

 

余談ですが、日本の永住権申請には「最低でも日本で10年以上の継続した在留歴」と「5年以上の就労資格または居住資格」が必要になります。現在のところ、特定技能1号と技能実習の何れでも適応外となりますが、特定技能2号の在留期間はこの5年間として計算できるため、将来的な永住権取得の道も見えてきました。

 

 

10.まとめ

 

本記事では、特定技能と技能実習の制度を比較しながら、それぞれの制度の特徴についても紹介をしました。

 

2019年に始まったばかりの特定技能制度と技能実習制度は、多く類似点があることも知ることができたと思います。

 

紹介した内容も参考にして頂き、2つの制度を活用して他社よりも早く、優秀な外国人材を獲得することをお勧めします。

 

 


お問い合わせ↗