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2021.10.20

フィリピンの日本語教育事情|フィリピンにおける日本語教育の歴史

はじめに

 

 

  • フィリピンと日本の共通点は多いです。フィリピンも日本もアジアの国で、海に囲まれた島国です。
  • フィリピンと日本も太平洋をぐるっと囲む火山帯に位置しているので、火山もあり、地震もあります。
  • 人口は日本が約1億2千万人に対し、フィリピンは約1億人、フィリピンの面積は、日本から北海道を抜いた面積とほぼ同じですから、人の数も土地の広さも、日本から1割ほど減らしたのがフィリピンです。
  • 東京からマニラまでは、直行便の飛行機で約4時間のフライト。機内で一息ついて、機内食を食べて、映画を一つ見るか、ひと眠りすれば、着いてしまう距離で、距離的、時間的には思っているよりも「近い」、と感じる人も多いのではないかと思います。

 

  • フィリピンにおける日本語教育の歴史は1923年にフィリピン大学フィリピン言語学科で行われた日本語講座から始まったそうです。戦時中はフィリピンでも日本の軍政下、日本語教育が推進されました。日本の敗戦により一旦は行われなくなっていた日本語教育は、1960年代後半から本格的に再開されました。本格的再開から50年以上が過ぎた現在の日本語教育ですが、フィリピン人にとって、日本語ってどういうもので、どこで学んでいるんでしょうか。フィリピンの言語事情、教育制度や、時代背景と併せて見てみましょう。

 

 

フィリピンの言語事情

  • フィリピンはタガログ語を含む100以上もの言語集団を擁する多言語国家で、タガログ語をベースにしたフィリピノ語と英語が公用語です。フィリピノ語は、公教育とテレビ等の普及に伴い共通語としての機能を果たしつつありますが、語彙の不備等の問題から知識言語としての要件を満たさず、政治、法律、ビジネス、教育の分野においては英語が使用されています。フィリピンはスペインによる植民地時代のあと、アメリカの植民地となったこと、戦後もアメリカと密接な関係があったこともあり、英語が長い間使用されてきました。
  • 1974年以降、公教育の全段階において、英語とフィリピノ語によるバイリンガル教育が実施されてきましたが、2011年より地方においては小学校3年生まではフィリピノ語ではなく地域の言語による教育機会を提供する政策が導入されています。つまり、フィリピンの首都マニラ近郊の人は、子供の時から慣れ親しんでいるフィリピノ語のベースであるタガログ語以外に、小学校1年生から英語を習い始め、3年生になると理系の授業はすべて英語で行われ、二か国語を話すようになります。地方の人は、その地方の言語(方言)以外に、小学校1年からフィリピノ語と英語を習い始め、3年生になると理系の授業はすべて英語。フィリピノ語は授業以外にもテレビ等で耳にするので、三か国語を話すようになります。すでに日常的に外国語を話しているのですから、さらに日本語を学ぼうというのは、大変かもしれません。また英語が話せるフィリピン人は、他のアジアの国と比較して、日本への関心よりも、英語圏への関心のほうが強いです。

 

フィリピンの教育制度

フィリピンの教育制度は、長らく、初等教育(小学校)6年、中等教育(高校)4年、高等教育(大学)4年(工学部は5年。医学部、法学部は学部卒業後入学。)でしたが、「K to 12」と呼ばれる教育制度改革が2013年に法制化され、実施されたことにより、就学前教育が義務化され、中等教育が4年からシニアハイスクールの2年を加えた6年間に拡充されました。つまり就学前教育→小学校6年、高校前期4年、後期2年、大学4年と日本と同じ就学期間となりました。

 

 

  • フルピンの教育事情についてはこちらのブログで記載しております。
  • 是非こちらも参照してください↓↓↓↓↓↓

フィリピンの教育事情 ~2012年の教育制度大改革以降の変化~

フィリピンの日本語教育

  • 国際交流基金が3年ごとに行っている海外日本語教育機関調査(2018年)によると、フィリピンの日本語教育機関の数は315、日本語学習者数は、51,530人です。学習者のうち、初等教育で学んでいる人が1,217人、中等教育で学んでいる人が11,412人、高等教育で学んでいる人が13,508人、学校教育以外で学んでいる人が25,393人と、学習者の半分は、小学校から大学までの16年間で、半分は学校教育後社会人となってから学んでいることがわかります。フィリピンでは、日本との経済格差と地理的近接から、日本語は観光業関連あるいは就労目的といった限られた動機で学ばれることが多かったため、学校教育よりも、民間で学ぶ人の方が多いです。
  • 学校での日本語教育は、全国的には大学から、一部高校後期課程から、日本語、スペイン語、中国語、フランス語、ドイツ語、韓国語からの選択外国語として、教えられています。ほとんどの大学は学習時間数50~100時間程度、多くても200時間のコースがあるだけで、初心者入門コースです。学生が日本語を選択した理由としては、1)日本語への興味や日本文化への関心、2)アニメ、マンガ、J-POPへの興味、をあげている学生が圧倒的に多く、大学生では、3)将来の仕事を理由に挙げている学生の割合も多いです。社会人になると、日本語学習の目的が、1)今の仕事で必要、将来の仕事ため、が大きな割合を占めます。

 

 

日本語教育の時代背景

  • 学生にとっては、近年の教育制度の改革で中等教育における日本語教育機会が増えたこと、また以前よりフィリピンでは、日本のアニメがテレビで放送されており、アニメとその主題歌のJ-POPへの関心が、日本語学習のスタートとなっています。スポーツではバスケットが人気ナンバーワンのフィリピンでは、スラムダンクが大ヒットしましたし、セーラームーン、るろうに剣心、ボルテスファイブ(古いですが...)なども人気を集めました。
  • 社会人にとっては、2000年ごろからフィリピンと日本資本による工業団地が立てられ、日系企業がフィリピンに進出したことや、2009年に1期生が送り出されたEPA(経済連携協定)の看護師候補生、介護士候補生に対する日本語研修、2010年より在留資格「技能実習」の創設で本格化した技能実習生の入国前講習など、フィリピンの日系企業での就労、日本での就労が日本語学習のスタートとなっています。

 

フィリピンにおける日本語能力テスト

 

  • フィリピンでは、国際交流基金が運営する日本語能力試験(JLPT)が、毎年7月と12月の年2回、首都のマニラ、ビザヤ地方のセブ、ミンダナオ地方のダバオで実施されてきました。
  • 介護の技能実習生は、JLPTのN4合格が要件です。N4というとどの程度の日本語能力かと言いますと、「初級日本語コースを修了したレベル」、「基本的な日本語を理解できるレベル」と定義されていて、話したり、聞いたりする内容は、日常的な内容で、ややゆっくりした会話、基本的な語彙や漢字を使った文章を大体理解できるというレベルです。
  • 介護の技能実習生の日本受入れスタートにあわせて、JLPTに加えて認められた、日本語NAT-TEST(JNAT)とJ.TEST実用日本語検定(JTEST)の二つの日本語テストも実施されるようになりました。JLPTが年2回なのに対し、JNATもJTESTも、2か月毎、年6回テストが実施されるため、両テストとも試験会場はマニラだけですが、介護実習生を目指すフィリピン人にとっては、より受験しやすくなりました。
  • コロナ前の状況ではありますが、技能実習生を送り出す機関からの受験者の増加による日本語能力試験、特にN4の受験者の増加が顕著で、今後もこの傾向が続くことが予想されるそうです。
  • TDGグループの日本語学校TSGAは、JNATの試験会場に近いので、JNATでの受験が多いです。偶数月に実施されるJNATですが、コロナ禍の今年は2月、6月、10月は実施されましたが、4月と8月のテストは感染拡大のため、中止となってしまいました。試験そのものだけではなく、試験が実施されるかどうかまで考えなければならないなんて...現在フィリピンは、感染者数が減少傾向にあるので、そのまま収束に向かい無事に12月も開催してほしいです。

 

 

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