2024.03.27
フィリピン人を雇用する際に必要な独特な手続き MWO申請手続き
フィリピン人を雇用する時の注意事項
フィリピン人労働者を特定技能などの在留資格で日本企業が雇用しようとする場合、他国とは異なり、フィリピン独自のルール(手続き)があります。
フィリピン人労働者を保護するフィリピン政府
海外で働くフィリピン人労働者は「OFW – Overseas Filipino Workers」と呼ばれています。OFWはGDPの約1割に相当する金額をフィリピンに送金するので、フィリピン政府から手厚く保護されています。そのため、フィリピン政府は、フィリピン人を雇用する外国企業と、彼らの送り出しに関与するフィリピン送出機関に厳しいガイドラインを設け、その遵守を求めています。
フィリピン人雇用を検討されている方は、POLOやPOEAという機関の名前を耳にしたことがあるかもしれません。現在POLOやPOEAは名称が変わり、POLOはMWO、POEAはDMWに変更されております。
フィリピン人が海外で就労する場合、フィリピン国の規則上OEC(海外雇用許可証)が無ければ海外就労が出来ません。 OECはDMWが発行しており、フィリピン国内での手続きが必要となります。そして、フィリピン人労働者がOECを申請するには、フィリピン人労働者を受入れる企業もDMWの認証を受ける必要があります。
2018年8月、フィリピンで比較的大きな法改正があり、外国企業がフィリピン人を「直接雇用」することが原則として出来なくなりました。ここでいう「直接雇用」とはどのような事かご存知でしょうか?
フィリピンでは以前、外国企業がフィリピンに出向いて現地のフィリピン人を直接面接し、雇用契約をすることが許されていました。
これが直接雇用(Direct hiring)と呼ばれるリクルート方法です。しかしこの法改正以降、フィリピン人を雇用する際には*原則としてフィリピン政府から認定を受けた現地の人材紹介会社「送出機関」を通じて人材の紹介を受ける採用方法を経なければなりません。
(*例外的に、条件を満たすことで直接雇用が認められる場合もあります。)
フィリピン政府から認定を受けた現地送出機関の情報は、移住労働者省(DMW:Department of Migration Worker)のホームページ内にある「Licensed recruitment agencies」で検索できますので御確認ください。
DMWホ-ムペ-ジリンク
https://dmw.gov.ph/licensed-recruitment-agencies
MWOへ申請する時に関係する重要機関
いざフィリピン人雇用を検討し始めると、様々なフィリピン政府機関の名称を目にすることになりますが、今回は代表的な機関をご紹介します。
DMW:Department of Migration Worker(移住労働者省)
海外で働くフィリピン人の権利の保護や福利厚生の促進などを目的に設立された政府機関です。フィリピン人労働者の就職先の審査や、送出機関へのライセンスの付与、雇用に関するガイドラインの発行や規制を行います。
MWO TOKYO/MWO OSAKA
DMWが設置する出先機関で、世界各国に拠点があります。日本にはMWO東京とMWO大阪があります。日本で就労するフィリピン人の雇用条件がDMWの定める基準を満たしているかなど、その国の企業がフィリピン人を適切に雇用しようとしているか、フィリピン人の福祉が適切に守られているかを確認する役割を担います。
DMWの海外支局的な存在です。
(POLO東京/POLO大阪が名称変更されました。)
MWO TOKYO(Migrant Workers Office Tokyo)
在東京フィリピン共和国大使館 移住労働者事務所
https://mwotokyo.dmw.gov.ph/index.php
MWO TOKYOは、東京都港区六本木のフィリピン大使館内にあります。
- 所在地:東京都港区六本木5−15−5
- メ-ルアドレス:mwo_tokyo@dmw.gov.ph
- 電話番号:03-6441-0428
- MWO TOKYOの管轄都道府県
北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨木、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、長野、静岡、山梨
MWO OSAKA(Migrant Workers Office Osaka)
在大阪フィリピン総領事館 移住労働者事務所
https://mwoosaka.dmw.gov.ph
MWO OSAKAは在大阪フィリピン共和国総領事館内にあります。
- 所在地:大阪府中央区淡路町4-3-5アーバンセンター御堂筋7階
- メ-ルアドレス:mwo_osaka@dmw.gov.ph
- 電話番号:06-6575-7593
MWO OSAKAの管轄都道府県
愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
フィリピン人を雇用する際の手続き
①フィリピン送出機関を決める
数多くある送出機関から、パートナーとなる1社を選びます。*1
②RAを締結
業務提携するフィリピン送出機関と「人材募集・雇用に係る募集取決め-Recruitment Agreement(R A)」を締結する。
日本では「送出機関との協定書」と呼ばれることが多い、いわゆる業務提携の契約書です。
③MWO TOKYO /MWO OSAKAの認証を受けるための書類審査
②の契約締結後、雇用主である企業は、フィリピン人雇用に関してMWOで認証(書類審査)を受けることになります。
MWOに提出する書類はMWO TOKYO及びMWO OSAKAのホームページからダウンロード可能です。在留資格の種類により提出する書類が異なります。
④MWOとのインタビュ-(面接)
MWOで③書類審査最終段階に、インタビュ-(面接)があります。従来は企業がMWOオフィスに出向いての面接でしたが、現在はオンラインで面接が行なわれています。雇用主である企業の代表者(監理団体の場合は代表理事)と、MWOの担当官による英語での面接となります。通訳の同席も認められています。通訳は雇用主である企業の従業員が望ましい、とされていますが、外部の翻訳を依頼する事も可能です。面接では通訳を含む、参加者全員の身分証明書及び名刺の提示が求められます。(面接はなく承認される場合もあります)
⑤MWO 承認済書類の受領
無事面接が終わると、MWOより「認証印」の押された書類が返送されてきます。MWO手続きの最大の難関が終了したことになります。
⑥雇用主とジョブオーダーのDMW登録
⑤でMWOから返送された認証済み書類を、提携先であるフィリピン送出機関へ送ります。フィリピン送出機関は提携パートナーである日本企業の代理としてDMWに書類を提出し、日本企業と求人票(ジョブオーダー)をDMWに登録します。DMWのデータベースに情報が掲載された時点でDMWの認可を得たことになり、晴れてフィリピン人を雇用することが認められます。
⑦人材募集、企業面接、雇用契約(内定)
⑥のDMWでの登録が完了すると、フィリピン送出機関は求人票をもとに人材を募集します。リクルートされた人材と雇用主(企業や監理団体)が面接を行い、雇用契約の締結(採用内定)と進みます。
⑧日本国内での手続き ~在留資格認定証明書申請(COE)~
面接を経て採用内定を受けたフィリピン人の受入れ機関(雇用主)は、地方出入国在留管理官署に対し「在留資格認定証明書」の交付申請を行います。
⑨査証(VISA)発給申請
在留資格認定証明書が発行され次第、雇用主は提携するフィリピン送出機関へ発送します。送出機関は在フィリピン日本国大使館に⑦の在留資格認定証明書を提出し、査証(VISA)の発給を申請します。*2
⑩出国前オリエンテ-ション(PDOS)の受講
フィリピン国籍の人が、OFWとして海外で就労する場合、フィリピン海外労働者福祉庁(OWWA:Overseas Workers Welfare Administration)が実施する出国前オリエンテーション(Pre-Departure Orientation Seminar:PDOS)を受講する必要があります。出国前オリエンテーションの受講申込みは、発行された在留資格認定証明書(COE)の有効期限内である必要があり、かつこのオリエンテーションの申込みはフィリピン送出機関を通して行なう必要があります。
⑪海外雇用許可証(OEC)発行手続き
フィリピン送出機関を通じて、海外雇用許可証(OEC)発行の手続きをします。
フィリピン人はOEC発行後、有効期限である60日以内にフィリピンを出国しなければなりません。
⑫出国前健康診断の受診
OFWとして海外で就労するフィリピン国籍の方は、フィリピン出国前に健康診断を受診する必要があります。この健康診断の受診申込みもフィリピン送出機関を通じて行なう必要があります。健康診断はフィリピン保健省(D O H)認定の医療機関で受診しなければなりません。また、日本の厚生労働省からは、入国前結核スクリーニングの実施についても通知がされております。最新情報についてはホームページ等でご確認ください。*3
⑬日本入国後、在留資格付与
フィリピン国籍の皆さんは、上記の様々な手続きを経て日本へやってきます。到着時の上陸審査にて上陸条件に適合していると認められると、上陸が許可され、「特定技能」など、労働が許可された在留資格が付与されます。
*1
TDGグル-プはフィリピン政府から認定を受けた送出機関 TDGHRM(TDG Human Resource Management, Inc.)をグループ傘下に擁しています。フィリピン送出機関をお探しの企業様は是非、TDGHRMへお任せください。
*2
TDGグル-プでは在フィリピン日本国大使館で査証(VI SA)の代理申請が認可されている旅行代理店UHIを運営しており、スムーズなVISA申請が可能です。
*3
TDGグル-プではフィリピン保健省認定の健診センターTMDCを運営しております。
日本在住のフィリピン人を雇用する場合
日本在住のフィリピン人を雇用する場合も、雇用するフィリピン人の在留資格が永住者、定住者、日本人の配偶者等身分系の在留資格以外の場合は、DMW公認の送出機関を経由したうえでMWOの審査が必要です。
(例外的に条件を満たすことで直接雇用が認められた場合を除く)
これらの手続きを行わずにフィリピン人を雇用した場合、就業者であるフィリピン人が不利益を被ってしまう可能性があります。(日本国内で在留資格が取得出来たとしても、フィリピン人労働者が一時帰国等でフィリピンへ帰国し、日本に戻るときの出国時にOEC提示を求められるため、日本に戻れなくなってしまうことが想定されます。)
OECを取得するためには、海外在住者の採用と同じように企業のMWO申請手続きが必要となります。
企業のコンプライアンスの面からも、正しい手順でフィリピン人雇用をしましょう。
出入国管理庁HP参照
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri06_00117.html
フィリピン人の直接雇用
フィリピン人の雇用は前述の通り、原則としてフィリピン送出機関を介して雇用されることが推奨されておりますが、例外的に条件を満たすことで直接雇用が認められる場合があります。
A. 外交団、国際機関、政府高官などフィリピン人政府の承認を得ている人が日本で就労する場合。
B. 上記以外で下記に該当する場合
1. 受入先が企業であること
2.高度技術・専門職の業種・職種であること(管理職、技術職(エンジニア)、教授)
3. MWOの規定する最低限度以上の報酬その他手当を含む福利厚生が保証されていること
4. フィリピン人の学歴が大学卒業以上であり、職務に関連する十分な専門知識と実務経験を有すること
直接雇用禁止の免除申請について(MWOのHP参照)
APPLICATION FOR THE EXEMPTION FROM THE BAN ON DIRECT HIRE | MWO Tokyo 【フィリピン移住労働者事務所】 (dmw.gov.ph)
まとめ
フィリピン人を特定技能等の在留資格で雇用する際のルールや流れをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
一連の手続きは慣れるまでは大変と感じられるかもしれません。書類の量が膨大なのは否めません。しかしフィリピン国の管理がしっかりしている分、雇用後のトラブルなどが起きにくいとも言われております。フィリピン人雇用の際はフィリピン独自の手続きに十分に注意をしましょう。
TDGグループでは、送出機関(TDGHRM)、日本語学校(TSGA)、フィリピン保健省認定医療機関(TMDC)、在フィリピン日本大使館認可のビザ申請代理店(UHI)をグループに擁しており、ワンストップでのサ-ビスを提供しております。
グループのコーポレートセンターであるTDGI東京では、MWO申請書類作成等の支援を始め、翻訳・通訳業務、フィリピン人採用に関するコンサルティング等の提供も行なっております。
フィリピンは国内産業が乏しいという事情もあり、海外に働きに出るOFWが多く、政府も、国民もOFWを応援しています。OFWは日本を始め、外国での就労に夢と高いモチベーションを持っています。
TDGグル-プでは、そうしたフィリピン人人財が1人でも多く日本で働ける機会を得られ、同時に人材不足に悩む日本企業の皆様の手助けとなるよう、フィリピンと日本の相互の発展に取り組んでおります。
フィリピン人雇用をご検討されている企業や監理団体の皆様、あるいはフィリピン人雇用に少し興味があるので話を聞いてみたい事業者様、是非TDGI東京までご連絡ください。
2021年10月15日のブログの更新版