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2023.06.02

今後どうなる!? 技能実習制度と特定技能制度

 

技能実習・特定技能 両制度の見直し

 

企業が外国人材を雇用できる制度である技能実習制度、特定技能制度に関する見直しが、政府の有識者会議で進められています。
両制度の施行状況を検証し、課題を洗い出した上で、外国人材を適切に受入れる方策を検討し、関係閣僚会議に意見を述べることを目的として、2022年12月14日から2023年4月28日まで計7回開催されました。
これまでの議論により、今後の両制度のあり方の方向性について一定の結論が出たことから、中間報告書がとりまとめられ、5月11日法務大臣に提出されました。
中間報告書で示された方向性にそって、具体的な制度の詳細を議論し、2023年秋をめどに、最終報告書が提出される予定です。

 

中間報告書

https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00033.html

 

有識者会議の中間報告書要約

 

日本の深刻化する人材不足において外国人が日本社会に暮らし、経済社会の担い手となっている現状をふまえ、外国人との共生社会の実現を考え、その人権に配慮しつつ、産業及び経済並びに地域社会を共に支える一員として外国人の適正な受入れを図ることにより、日本で働く外国人が能力を最大限に発揮できる多様性に富んだ活力ある社会を実現するとともに、日本の深刻な人手不足の緩和にも寄与するものとする必要がある。このような観点から、技能実習制度と特定技能制度が直面する様々な課題を解決した上で、国際的にも理解が得られるものとなるよう、各論点について検討の方向性を示す。

 

技能実習制度と特定技能制度の制度趣旨について

 

1)制度目的と実態を踏まえた制度の在り方

 

技能実習制度は人材育成を通じた国際貢献を制度目的とし、労働力の需 給調整の手段としてはならないという基本理念を掲げているものの、技能実習生が国内の企業等の労働力として貢献しており、制度目的と運用実態のかい離が指摘されている。

技能実習についての基本情報 | 外国人技能実習機構 (otit.go.jp)

 

現状技能実習制度の基本理念である人材育成を通じた国際貢献と実態のかい離
  新たな制度現行の技能実習制度の廃止、

人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設

実態に即した制度への抜本的な見直しを検討

特定技能制度は制度の適正化を図りつつ引き続き活用し、新たな制度との関係性、指導監督体制や支援体制の整備などについて引き続き議論する

 

2)外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築

 

現状職種が技能実習と特定技能と不一致
  新たな制度現行の両制度の全ての職種や分野等並びに特定技能2号の対象分野の追加及びその設定の在り方について、必要性等を前提に検討

 

3) 受入れ見込数の設定等の在り方

 

現状受入見込み数の設定プロセスが不透明
  新たな制度国内の人手不足状況に対して的確に対応できる仕組み

 

4)転籍

 

現状技能実習制度は原則不可
  新たな制度従来よりも転籍制限を緩和する方向で検討
(転籍制限は残す)

 

5)管理監督や支援体制の在り方

 

現状監理団体、登録支援機関、技能実習機構の指導監督や支援の体制面で不十分な面がある。悪質な送出し機関の存在
  新たな制度監理団体や登録支援機関が担っている機能は重要。他方、人権侵害等を防止・是正できない監理団体や外国人に対する支援を適切に行えない登録支援機関を厳しく適正化・排除する必要がある。
監理団体や登録支援機関の要件の厳格化等により、監理・支援能力の向上を図る
悪質な送出機関の排除等に向けた実効的な二国間取決めなどの取組を強化

 

6)外国人の日本語能力の向上にむけた取り組み

 

現状技能実習制度は介護職以外は、本人の能力や教育水準の定めなし
  新たな制度一定水準の日本語能力を確保できるよう就労開始前の日本語能力の担保方策及び来日後において日本語能力が段階的に向上する仕組みを設ける
悪質な送出機関の排除等に向けた実効的な二国間取決めなどの取組を強化

 

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第7回) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

 

 

最後に

 

今回の中間報告書で、技能実習制度を廃止し、新たな制度の創設が提言されています。
新たな制度が創設されたとしても、名前だけが変わり、中身は変わらないのでは意味がありません。

 

日本の人手不足の対策だけを考えるのではなく、外国人労働者を受入れる体制をきちんと見直し、根本的な問題が全て解決され、日本で働く外国人労働者の権利が保障され、日本語能力が身につく体制をつくり、外国人労働者1人1人が日本で暮らしやすい環境を得ることできるようにすることが重要であると考えます。

技能実習制度では、国によっては日本に来るときに実習生が多額の借金(70万~100万)を斡旋会社(ブロ-カ-)に支払うケースがあります。多額の借金をしてでも高収入を求めて来日する実習生。
劣悪な環境であっても借金返済のためには途中で実習を辞めて帰国することが出来ず、我慢して実習を続けならないという負の連鎖になっています。
そのような劣悪な環境が技能実習生の失踪者を生む1つの原因になっていると考えられます。

 

2022年上半期

国籍

技能実習生数

技能実習生の
失踪者数

割合  
総数327,6893,7981.16
ベトナム181,9572,7861.53
インドネシア39,177560.14
中国36,1103610.99
フィリピン29,537200.06
タイ9,149260.28

 

上記表は2022年6月末現在の法務省で発表されている、技能実習生の失踪者数と技能実習生の数です。
他の国に比べ、フィリピン共和国の技能実習生の失踪者数の割合がとても低いことが分かります。

フィリピンは海外で働くフィリピン人労働者(OFW)を大変手厚く保護している関係上、日本の技能習制度に関わる監理団体、およびフィリピン送出機関に対し、厳しいガイドライン(施行規則)を設けています。
フィリピンの移住労働者省(Department Of Migrant Workers: DMW)の認可を受けた送出機関のみが技能実習制度に関する業務を認められています。そして、日本国内においてもDMW出向機関であるフィリピン海外移住労働者事務所(Migrant Workers Office :MWO (旧POLO) )が「監理団体」および「実習実施企業」の審査を行い、DMW(フィリピン)での認証を受けることが求められています。
このDMW認証(Accreditation)を経て、送出機関、監理団体ともにフィリピン人技能実習生の受け入れのための活動(リクル-ト)が許可されます。
また、DMWは技能実習生の斡旋会社(ブロ-カ-)への借金を認めておりません。
DMWは、入国した実習生の動向も管理する行政庁で、フィリピンの送出機関は定期的にDMWへ実習生達の現状を報告する義務があります。

 

フィリピン人を既に雇用されている企業様、監理団体様はご存じだと思いますが、上記DMWの手続きは煩雑で、DMW独特の視点から、提出した書類に疑義が入るなど、他国と違い時間がかかることが多く、また、企業様がフィリピン人実習生を受入れる場合の負担金額も他国に比べて多くなることも事実です。
もちろん、借金がないから失踪者数が少ないとは一概には言えず、日本語能力不足からくるコミュニケ-ション不足の問題、正規賃金を払わない等、労基法に違反する企業、実習先を自由に選択出来ないこと等、実習生の失踪にはさまざまな要因があります。
一方で、フィリピンのように出身国側の厳しい基準で労働者の受け入れ側が審査され、労働者本人の借金返済のために仕事を辞めることが出来ないという心身的ストレスがない場合、外国人労働者の失踪率が少なくなることは明らかです。

 

TDGグル-プのフィリピン送出機関であるTDGHRMは、日本で働きたいフィリピン人を全力でサポートしています。
深刻な労働力不足に直面している日本。企業がウェルビーイングを重視した労働環境を意識し、日本で働きたいという外国人労働者とがwin-winな関係を築くことができる制度へと生まれ変わることを期待します。

 

※別のブログにて、MWO(旧POLO)の手続きをご紹介しています。
-フィリピン人技能実習生を採用時のPOEA・POLOの手続きについて-

 

参考資料

技能実習生の失踪者数の推移(平成25年~令和4年上半期)

https://www.moj.go.jp/isa/content/001362001.pdf

 

令和4年6月末現在における在留外国人数について(出入国管理庁)

https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00028.html