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2022.02.10

特定技能における建設分野での外国人労働者の受け入れ-

現在、建設業で働く外国人労働者数は11万人とも言われており、外国人労働者はすでに建設業界ではなくてはならない存在となっています。

 

外国人労働者の中では、技能実習の在留資格により就労している外国人が多いですが、「技能実習」は技能の習得とその母国への移転が目的であるため、日本での技能実習期間が定められており、その期間が終了すると技能実習生は帰国しなければならないのが前提です。

 

一方、2019年に 創設された在留資格「特定技能」は、人材の確保が困難な一部の産業分野の人手不足に対応するために、一定の専門性・技能を有する外国人材を即戦力としての労働者として受け入れるための在留資格であり、その運用により建設業を含む業界での、人手不足問題の改善が期待されています。

今回は建設分野での、在留資格「特定技能」の概要、受け入れ計画と現状について紹介いたします。

 

特定技能における建設分野での外国人労働者の受け入れ

 

「目次」

 

1.特定技能<建設分野>で 就労する上で必要な外国人労働者の要件 

・試験合格ルート
・技能実習修了ルート
2.受入れ企業の要件
・国土交通省の計画認定について
・特定技能受入計画認定における建設業の独自要件について
① 建設業許可
② 建設キャリアアップシステムへの登録
③月給制による給与支払い
④ 人数枠
⑤JAC(建設技能人材機構)への加入
3.職種
4.まとめ

1.特定技能<建設分野>で 就労する上で必要な外国人労働者の要件

 

特定技能の在留資格で日本に入国するためには、日本や母国で特定技能評価試験と日本語能力試験を受験し、合格するルートと、技能実習生として日本に来ていた外国人が技能実習2号修了後に特定技能の在留資格へ移行するルートの2つに分かれます。

 

試験合格ルート 

 

技能実習制度を利用していない外国人が特定技能の在留資格を取得するためには、日本や母国 で行われている特定技能評価試験に合格し、さらに日本語能力試験の一定水準以上の基準を満たす必要があります。

建設分野の特定技能評価試験は、図面の読み方や安全に関するもの、技術的な問題など業務に必要な基礎知識を図る問題が出題されます。さらに各建設分野の実技試験も併せて行われます。

 

実技試験の詳細はこちらを参照してください。

https://jac-skill.or.jp/exam/index.php

 

日本語能力試験は、基本的な日本語が理解できるレベルとされるN4以上の結果が必要です。
特定技能評価試験と日本語能力試験の基準をクリアした上で、日本政府に在留資格の申請を行い、承認されれば、特定技能労働者として入国することができます。

 

技能実習修了ルート 

 

外国人が、技能実習生として技能実習を良好に修了している場合に対象となるルートです。

良好に修了しているというのは、技能実習を2年10カ月以上修了し、さらに技能実習生の実習中の業務態度、出勤状況などを記載した評価調書がある場合で、在留資格の申請を行うことで、技能実習から特定技能への切り替えが行えます。

評価調書がない場合でも、技能検定の3級相当に当たる評価試験に合格していることを条件に特定技能への切り替えが可能となります。
技能実習生から特定技能に切り替えを行うことで、日本で働き続けることができることになります。

 

 

2.受入れ企業の要件

 

特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用する企業 ・個人事業主は、特定技能労働者の受け入れ機関(特定技能所属機関) と呼ばれます。建設分野の特定技能所属機関は、他の分野においても必要な要件に加え、在留資格取得申請を出入国在留管理庁へする前に、国土交通省に建設特定技能受入計画認定を行う必要があります。

 

建設分野において特定技能受入計画認定を行うのは、技能実習生を雇用する一部の企業が実習生に不当な扱いを行っていることや、他産業と比べ技能実習生の失踪が多いことが社会問題となったため、一定の基準を満たした企業に特定技能の外国人労働者を受け入れることができるよう制度を定めたことによるものです。

 

低賃金や不当な長時間労働、暴力など技能実習生のおかれた雇用環境が適正に守られていない企業が他産業と比べ多かったため、技能実習制度でも規制強化が行われており、ルールを守らない企業を排除していく方向に向かっています。

 

それにならって特定技能による受け入れ制度においても、特定技能所属機関に一定の基準を求めています。

なお、建設分野以外の特定技能の産業(建設以外の13業種)では、特定技能受入計画認定といった措置はありません。

 

国土交通省の計画認定について

 

特定技能受入計画認定の申請書類の中には、会社の登記事項証明書や建設業許可証の写しといった基本的な書類から、賃金や時間外に関する協定書(36協定)など、労働に関する基本的な書類の添付が必要となります。

 

また何人の特定技能労働者を受け入れる予定があるかといった内容を記載する外国人受け入れリストなどがあります。

 

申請はオンラインで行うことができ、書類はPDFデータ等で送付します。

この特定技能受入計画書を申請し、特定技能受入計画認定が行われると、初めて特定技能の在留資格認定申請を行うことが可能となります。

 

特定技能受入計画認定における建設業の独自要件について

 

国土交通省に建設特定技能受入計画を申請する際に、建設分野独自に設けられた条件は以下の5つです。

 

① 建設業許可

建設業を行っている会社であれば、建設業法による建設業許可を都道府県または国土交通省へ申請を行っている場合があります。建設特定技能受け入れ計画を申請する際には、会社として建設業許可を取得している必要があります。

 

② 建設キャリアアップシステムへの登録

 

建設特定技能受け入れ計画を申請する際に、建設キャリアアップシステムへ会社が登録していることが条件となります。
建設キャリアアップシステムとは、建設業は日雇いで働く人も多いのですが、こうした人がいつ、どのような現場で就労したのか、といった記録を電子的に保存し、その人がどの会社でどの業種で働いたのかを個別ICカードによる管理を行うことができるシステムです。ミーテキストです。ダミーテキストです。ダミーテキストです。

 

③ 月給制による給与支払い

 

建設業の雇用形態の中には、現場に出た日数で給料を計算し、支払っているという会社もあります。こうした場合、現場日数が少ないと給料が少ないなどの弊害が出てきます。

建設特定技能受入計画を申請する際の国土交通省が出している告示の中に「同等の技能を有する日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給を行うとともに、その旨を特定技能雇用契約に明記していること」とあります。

申請を行うためには、日本人と同じように技能の習熟度による定期昇給があり、安定的な報酬(月給)を支払う必要があるとされています。
これは、就業規則などによりこの内容を証明する書類を提出することになります。

 

④ 人数枠

 

建設分野では、特定技能で受け入れる企業の人数に制限が設けられています。
技能実習生、特定技能就労者を除く常勤職員の総数を超えないこととされています。
つまり、日本人の従業員以上の人数の特定技能就労者を雇用できない形となっています。

 

⑤ JAC(建設技能人材機構)への加入

 

JAC(建設技能人材機構)は特定技能の在留資格が新設された際に設立された業界団体です。

建設分野での特定技能労働者を含む、外国人材の適正かつ円滑な受入れや、そのために必要な技能評価体制の整備を行うことで、建設分野における人材の確保と定着を進め、建設業界の健全な発展に資することを目的としています。

 

具体的には、特定技能労働者の円滑な受け入れのための相談窓口や、特定技能労働者からの苦情に対する母国語対応、特定技能外国人の職業紹介、教育訓練や技能試験の拡充、特定技能制度周知の普及などの業務を行っています。

 

JACへの加入方法は直接加入する方法と、各分野の建設業者団体を通じて加入する方法と二種類あります。
直接加入する場合は賛助会員と呼ばれる会員で、年会費24万円で登録することができます。各建設業団体に登録している場合、団体を通じて間接的に加入することができます。その際には会費や支払い方法などは各団体によって異なります。

 

JACに加入することで、在留資格取得に必要な特定技能評価試験の情報も得られるため、技能実習生を特定技能の在留資格に切り替えて雇用する際にも有効と言えるでしょう。

 

 

3.職種

 

建設分野特定技能受入れの対象職種は18職種(2020年2月28日現在)で、その中でもどのような業務にあたることができるのか、といった内容が国土交通省のガイドラインに細かく明記されています。

 

特定技能 /建設分野(18職種)
型枠施工コンクリート圧送建築大工*土工屋根ふき*吹付ウレタン断熱
*鉄筋継手とび建設機械施工建築板金保温保冷鉄筋施工
左官*トンネル推進工配管屋根ふき*電気通信 *海洋土木工

 

*印のついている6つの職種は、技能実習がない職種のため、試験合格ル-トで、試験を受験し合格する事が必要です。

技能実習制度でも同様な規定がされておりますが、この職種以外のことを技能実習生に行わせていたという企業があったことも大きな問題となりました。

特定技能でも同様の問題が起こらないよう、国土交通省でも申請により監視を強化していると言えます。

 

4.まとめ

 

特定技能の在留資格が新設されたのは2019年の4月です。

新設の際に、各業種での特定技能外国人労働者の5年間での受け入れ目標が発表されました。

 

建設分野では4万人を目標に、建設現場に特定技能の外国人の就労を促すという政府の方針です。
しかし昨年(2021年)の9月末までに建設分野の特定技能1号の取得就労者は3700人程度に留まっています。

 

参考資料 出入国管理庁webサイト特定技能1号在留外国人数

(https://www.moj.go.jp/isa/content/001357709.pdf)

 

新型コロナ感染症のパンデミックによる入国制限の影響が大きいとは思いますが、目標を大きく下回っているといえるでしょう。

 

しかし、今後、特定技能で就労する外国人が増えていくということは政府目標からも明らかとなっております。
人手不足の切り札として、特定技能で働く外国人は様々な業種、業務で、大きな存在となりうるでしょう。

 

 


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